ヤギは草食動物というだけあり、やはり主食となるのは草です。

そして、食べるときには地面近くの草も食べることができることから、丈の短い草も食べることができます。
そのため、時に根こそぎ食べますから、野生のヤギは植生を変えてしまうほどの破壊力のある動物であり、生態系すら変えてしまうともいわれているのは今までにも紹介してきました。
ヤギによる国土破壊

 

ヤギを飼育するときは、ふつう比較的広い草原がある場所であることが多いです。
運動させる場所にもなり、エサとなる草もあるからです。
ですが、実のところヤギは乾燥を好み、湿気のある所を嫌がるとされています。
沖縄では「山羊が鳴けば雨が降る」という言葉があるくらいなのだそうで、平地で湿度が上がってくるとその場にいることを嫌い、鳴きだしてその場から離れようとするのだそうです。

 

このことから、ヤギを飼育する際にはヤギが湿気を気にせずに上がることのできるものを置いておくとよいのだそうです。

ヤギの台

ヤギの台

ヤギが高いところに上りたがる性質というのは、もしかするとこのように湿度変化を感じ取って濡れやすい地面を避けて高いところに上る、という習性に由来しているのかもしれませんね。
また、ヤギは水分代謝が良いので他の動物よりも水分が少なくても大丈夫なのだそうですが、このこととももしかすると関係があるのかもしれません。

 

それから、ヤギはいろんな草を食べることができるそうです。
もちろん毒を含むものや消化できないものなど、目の前にあっても食べないものというのは存在するので、「なんでも食べる」というわけではないのですが、ほかの動物と比べると様々な草を食べます。
また、草だけではなく、葉や実、樹皮などや野菜や果物も食べます。

そのため、ほかの動物と比べて環境に適応しやすい、ということでもあります。これはヤギが他の草食動物に比べて消化能力が高いことに由来するようです。
そのため、草食動物としては粗食に耐えるほうなのだといいます。

 

そして、高いところに生えている葉などでも食べることができることから、生活圏も広いということでもあります。
このことが、前にも紹介したアルガンの実を食べるために木に登る「ヤギの木」のようなことにもつながってくるわけです。

ヤギの木

ヤギの木



 

もっとも、「粗食に耐える」とはいいますが、実際には「粗食でも生きていける」ということであって、「粗食を好む」ということではないようです。

「好き嫌い」もありますし、同じものばかりを食べると飽きることも多いのだといいます。
ヤギはむしろ「好き嫌いは激しい」のだとも言われているようです。
もしかすると、ガマンしないといけない状態に耐える忍耐力は強いけど、ガマンしなくていい場面ではわがまま、ということなのでしょうかね。

そのため、ヤギを飼育する際にはいろいろな種類の草を用意するといいのだそうです。
なんでも生草ばかりを食べさせるとオナカを壊しやすくなるということなので、エサとして用意するときは生草と干し草の両方を用意することが多いようです。
まあ、最近では配合飼料やペレットなどを食べさせることも多いようですね。

 

さて、このようなヤギですが、人類はこのヤギをいろいろな場面で活用してきた歴史があります。
ヤギの歴史と品種

 

そのなかに「除草」のためにヤギを活用するというものがあります。

最近では、広い敷地や傾斜地を含む人の手では除草しにくい場所を除草するためにヤギを飼うことも多くなっているようです。
また、そういう需要を見込んで除草用のヤギをレンタルする会社や団体などが増えているようです。

一例
ヤギレンタル・販売 | 産直市場 グリーンファーム

・【ヤギレンタル】レンタル実績のご紹介①

・ヤギの除草パワー恐るべし/一匹10日間花ちゃん物語/耕作放棄地問題解決第一歩


 

google動画検索で「ヤギ 除草」で検索すると「約 8,410 件中 9 ページ目 」という結果が出ます。
最近だと、団地や企業の敷地に広い雑草地帯があったりするところでこのようにヤギを活用することがとても増えていて、国交省でも活用していたりするようです。

このような形で、ヤギが身近になり、ヤギに接する機会が増えてヤギを好きになる人が増えるのはとっても嬉しいことです。

 

ヤギの除草がとても分かりやすい例がこちらの動画です。


草だらけの傾斜地が数日で一変するさまが早回しで収録されてとてもよくわかります。

ですが、この動画を見て気づくことがあります。
それは、どうみても「これは食べてもらうことを想定していないだろう」というものまで食べてしまっている、ということと、「食べやすいところにあるのに一切手を付けていないものがある」ということです。
また、完全にすべてを食べつくした、というわけでもないです。

つまり、ヤギは食べたいものだけ食べるわけです。
そして冒頭でも紹介したように、食べられないものもあるわけです。
ですが、食べられるところに食べたいものがあれば、人間の都合など関係なく食べてしまいます。

 

確かに傾斜地を除草するなんてことになると、機械では困難ですし人間でも作業の困難な傾斜地などではヤギにやってもらう、というのはとても便利です。コスト的にもかなりヤギのほうが安いようですし。

ですが、草刈り機で一面きれいに刈り取る、というような感じを期待していると食べ残しはあるし食べてないものもあるし、余計なものまで食べられた、なんてことになるわけです。

また、ヤギは行動範囲が広く、興味のあるものを見つけるとそっちへ行ってしまいます。
また、木に登ることからもわかるように、想像しないような場所に登ってしまいますし、そのためのジャンプ力もあります。
ということは、気づくと脱走してる、なんてこともあるわけです。
ポニョの一件がそれを物語ってますね。

 

そのため、結局見張っていないといけないとか、食べてほしくないものを食べないようにしないといけないとか、食べ残しや食べなかったものは結局自分で処理しないといけない、などと不満の声が上がることも多いようで、結果コスト的にも削減にならなかった、なんて話もよくあります。

もちろん、直接効果だけではなく、ヤギがかわいいので近隣へのイメージアップになるとか、癒し効果を期待して、なとという複合的な理由で飼うこともおおいようですが、時には鳴き声がうるさいとか臭いとか、そういう話になることもあるようです。

 

これは、ヤギによる除草を「安く全自動でどんなところでもきれいにしてくれるエコな草刈り機」と思っている方が多いのだと思います。
いうまでもなくヤギは生き物です。
好き嫌いもあるし、食べられないものもある、感情もあるし体調だってある、ってことをしらずに飼うと、結局はお互いが不幸になる、ってだけの話なんだと思います。

 

ヤギの有用性が広まることや、そこからヤギが好きだって人が増えるのはとてもいいことだと思うのですが、ヤギのことを理解しようともしない人がヤギを飼うというのは、できればやめてもらいたいですね。せめて、ヤギのことを少しは知る努力くらいはしてほしいなあ、と思うわけです。

こういう活用の中から、ヤギについて知っていって、人間とそのほかの動物の関係性というものについて考えることができる人が増えていくことが理想なのではないでしょうか。
爆発的な拡大よりも、着実に増えていくことのほうが望ましいのでは、と私は思っています。

 

というわけで今日は草を食べるヤギのお話でした。

 

今回も、専門的な分野に踏み込んだ話をしていますが、私はヤギの飼育経験もなければ研究などをしたこともなく、調べた範囲で理解したことだけを書いているため、事実に反する部分や誤解を招く部分等があればツイッターで指摘していただけるとありがたいです