北海道には、当別町という街があります。
当別町は、札幌市の隣町です。
基本は農業基盤の小さな町ですが、札幌から近く電車も頻度運転されていることから、札幌のベッドタウン的な側面もあります。
また、北海道医療大学という大きな医療系の大学があることから、大学生の居住も多く、また札幌からの通学生も多い学園都市でもあります。
そのほかに、変わったところでいうと、田園地帯でのスローライフを意図した移住者などもいたりもしますし、北欧風の街並みで統一した新興住宅地の「スウェーデンヒルズ」なんて言う地区があったりします。
そのほかにも奥地へ行くと当別ダムという新しいダムがあり、札幌圏広域にわたる新たな水源として今後活用されていくことになっていて、このあたりは秋には一面の紅葉で包まれるとても景色の良いところです。
いまはまだ知名度がそれほど高くはないですが、じわじわとその存在が知られるようになってきて、隠れた紅葉の名所にもなっていたりしますし、「道民の森」という広大な自然公園的な森林もあって、植物や地形などの「自然」(実際には人が手をくわえた緑や水や地形なので「自然」というのが適切かどうかはわかりませんが)資源が豊富な町です。
また、開拓期には、伊達家の分家(仙台の伊達家の一族と四国の宇和島藩の伊達家)が開拓を行った歴史があるため、北海道の地方の町としては珍しく古い建物などの街並みが今でも残っていたりします。
そのため、派手さはないものの北海道らしくない風情のある町となっています。
当別町(公式)
https://www.town.tobetsu.hokkaido.jp/
このように書くと、とても資源や産業も豊富で若者もいる賑やかな町のように思えますが、実際には町の中心部はとても静まり返っていて、街はずれの大学と、郊外を走る国道の交通量だけが多く、人口の減少は幸いにしてまだそれほどではないものの、典型的な過疎のイナカ町といっていいような町だったりするのです。
そのため、札幌から30分に1本のペースで6両編成の電車がくる駅のわりに駅前は閑散としていて、古くからの商店街もシャッター街になっています。
こんな商店街の中に、実はヤギがいます。
なんでも飼い主は、地元で会社をいくつもやっている方で、地元商店街の町おこしなどもやっているという方だということです。
街づくり事業を行っている施設の隣の狭い敷地にヤギが2頭いました。
この施設では時間限定で食事なども提供されているようです。
(訪問時はすでに閉店後の時間帯でしたのでお邪魔はできませんでした)
まわりをネットで囲った敷地には軽自動車が置いてあって、そこがヤギ小屋のかわりになっています。
訪問すると、クルマの中でヤギ2頭がお出迎えしてくれました。
どうやらこの2頭は親子らしいです。
黒色のほうが母親で「めい」、茶色のほうが息子で「むぎ」というそうです。
どうやら今年新たにヤギが1頭増えたようなのですが、このときはまだこの場所にはいなかったようです。
自宅の方にヤギ小屋があって冬場はそっちで過ごしていて、春になってこちらに移ってきたようです。
もう一頭はまだそっちにいるのかもしれません。
昨年はこの場所にも小屋が建っていたようですが、今年は小屋を建てずにクルマを小屋代わりにしているようです。
やはり小屋は冬場にも手入れしないといけないのでこちらのほうが楽なのかもしれないですね。
小屋代わりのクルマにはこのようなステッカーが貼られています。
昨年は、ヤギの名前を書いた掲示もあったようです。
また、ここのヤギは昨年この場所に着たようなのですが、名前がまだ決まっていない時期には名前募集ということで、名前を書くボードも現地には用意されていたようです。
敷地横の建物にはこのような壁画があってこれが目印になります。
敷地は橋のたもとになっていて、すぐ裏手には「パンケチュベシナイ川」という川が流れています。
ときどき川沿いの草を食べていたりするようです。
やっぱり高いところが好きなようです。
いくつか丸太が置かれていますが、やたら上ってそのうえで互いに頭突きしてました。
はっきりいってとってもかわいいです。
時間を忘れてかなり長居してしまいました。
ですが、場所は街中心商店街です。
人通りはほとんどいないのですが、比較的交通量のある道路の面したところなので、ハタから見ると不審者だったでしょう。
ですが、通りかかる車のひとたちは別にそこを見るでもなく、「なにしてるんだろ」という目で見るでもなく通り過ぎていきました。
おそらく、地元の方にとってはここにヤギがいるのはもう周知の事実なんだろうなと思います。
また、すぐ近くに小学校があることから、もしかすると下校最中の子供たちにとってはいい遊び場だったりするのかもしれませんね。
現地は広い歩道も整備された広い道路に面していますが、その周辺は当別町らしい北海道にしては珍しいとても狭い道路の商店街です。
ですが、現地から橋を渡った川の反対側には駐車可能なスペースがあります。
もし、見に行くのであれば電車で「石狩当別駅」で降りて5分ほど歩くか、または自家用車で訪問してこの場所に駐車することになるかと思います。
なお、駅前には農産物の即売などを行っている店があります。
それほど小きな店なため品ぞろえは決して良いとはいいがたいですが、かなり品のよい作物が出ている印象です。
また、郊外の国道バイパスにある道の駅の即売所はものすごい品ぞろえで、かなりいい野菜が安く手に入るため、いつ行っても混雑しています。
この当別町は、大きな武家が早いうちに開拓を始めたことからもわかるように、農業にはとても向いている場所だったようです。
隣町の新篠津村などになると、広大な水利の良い地勢でありながらも、乱流する石狩川と悪い土質のために、大規模な治水と客土を行わなくては農業が成り立たなかった、なんていう場所であることと比べると恵まれた場所だったのかもしれません。
今はさびれてしまったとはいえ、かつての繁栄の跡がうかがえる街並みを見るにつけ、とてもいい場所だったんだろうなあ、という気がしてなりません。
いまは大学と宅地で町としてはなんとかしているのかもしれませんが、街の中心部からいずれも離れているため、中心商店街は本当に厳しそうな印象です。
ですが、このようにできることから町おこしをしようとしている人が現地に存在することは、傍から見てもとっても希望を持ちたくなってきます。
当別町はおそらく道外の人には全く知られていない町だろうと思います。
駅名も「石狩当別」という名前で、もともとは道内に市町村名ではないものの「当別」を名乗る地名が存在するために、そこと区別するために石狩の名を冠されてしまった駅です。
そのため、近接する石狩市の駅と間違われてしまい、石狩市に行きたい人が間違えてここにきてしまう、ということが時々あると聞きます。
それを受けて、近いうちに駅名を「当別」に変えることが決まったということです。
隣接する「石狩太美」の駅も「太美」に変えるといいます。
これは、町内のビトエ地区にチョコレートなどの菓子で有名なロイズが大工場と見学施設などを付帯した観光施設をオープンさせることになったため、隣接して「ロイズタウン駅」という駅を来年(2022年)を開駅させることと連動して行うものだといいます。
このロイズタウン駅は、JR学園都市線の札幌市内の最終駅である「あいの里公園駅」から石狩川を渡ってすぐの場所に位置します。
札幌から近く交通の便もいい、というメリットを最大限に生かして街を盛り立てていこうという動きで、正直これほど恵まれた条件ってあまりないのだとは思いますが、それを最大限に生かそうという町の本気度がうかがえる話です。
このことは残念ながら街の中心商店街には直接の影響はでないと思います。
ですが、そうすることによって町の地盤沈下を抑えていくことで次の手が打てるようになるのであれば、それはそれでいいのではないかとも思えます。
札幌に住んで結構経ちますが、この当別町は街並みと言い自然といい農作物と言い、とても魅力ある街で、ついつい繰り返し訪問してしまう街です。
このロイズの政策も含め、コロ助でどのようになっていくのか心配なところではありますが、良い方向に向かっていってほしいものだと切に思います。
というわけで今日は「商店街のヤギ」と題して当別町についてでした。