ヤギという生き物には、品種というものがたくさんあり、世界で500近い品種がいるそうです。

ヤギにかぎらず他の動物でも品種がたくさんあるのは普通のことですが、ヤギの場合は大きく分けて「家畜として飼われている品種」と「そうでないもの」にわけることができるようです。

 

家畜以外の種としては、「ibex」というような種類や、「パサン(Pasang)」「マーコール(Capra falconeri)」なんていう種もいるようです。
この「ibex」には「アルプスアイベックス」のほかにも「シベリアアイベックス」「カフカスアイベックス 」などの種がいるそうで、もともとは中央アジアや中東、北アフリカ、ヨーロッパなどにいろんな種類が生息していたようです。

また、家畜とされているものは「Capra hircus」という種なのだそうで、もともとは先ほど書いた「パサン」が家畜化されたものが源流だという説が有力だそうですが、いまだ諸説入り乱れる状態で定説が定まっていないとのことです。

 

一般に日本で「ヤギ」といって思い浮かべる外見のヤギは、この家畜種の「Capra hircus」のほうで、対してibexなどの野生種は大きな角といかつい外見を持っていることが多いようです。

Capra hircus の例

Capra hircus の例

ibexの例

ibexの例

アイベックスなどの野生種のヤギは、このように大きな角があることから古くから狩猟の対象となり、一時期は絶滅危惧種となっていたこともあるようです。
角をそのまま使うだけではなく、薬効があるとされて乱獲されてしまったこともあったのだそうです。
それが、現在は保護対象の動物となっており、自然公園などの保護区で環境の整備などが行われたため最近では少しずつ数を戻してきているのだとか。

基本的に山岳地帯に多く生息していて、険しいガケによじのぼっている写真などで見かけるのはこの野生のアイベックスがほとんどです。

 

一方家畜種のほうは、生育に都合の良いように選抜交配による品種改良をおこない、目的に応じた飼育が古くからおこなわれていたようで、それぞれの地域で数多くの品種が生み出されてきたようです。

わかっているだけでも、紀元前7000年ころには西アジアで飼育していた痕跡が残っているそうで、家畜としての歴史は他の動物と比べてもかなり早い部類に入るのだそうです。一説では紀元前9000年ころには飼育が始まっていたなんて説も有力なんだそうです。

なんでも、乳製品というものを初めて作ったのがヤギの乳からだったともいわれているそうです。
それから、乳だけではなく肉や皮革も角も幅広く人類に使われていて、牧畜の歴史はヤギからはじまったといってもいいくらいなんだとか。

ただし、労役用や乳用、食用などのそれぞれの場面でヤギよりも優れた動物が飼育されるようになり、牛や羊や馬などにとってかわられた場面も多いようなのですが、それでも過酷な環境に耐えることや、粗食に耐えることなど、飼育に都合の良い面も多いことやとても多用途に使えることから、ヤギを飼育することが廃ることはなかったんだそうです。

 

日本には、14世紀ころに持ち込まれたのが起源といわれているようです。
ここから沖縄や九州の離島部などでは飼育が始まり、現在のトカラヤギやシバヤギなどの起源となったようです。
一応はこの時期に持ち込まれたものの子孫たちが、のちに明治以降に品種改良をされていったものが「日本の原産種」ということになっているようです。
また、江戸時代のいわゆる「隠れキリシタン」と呼ばれる人たちは、ヤギを貴重な栄養源としていたなんていう記録もあるのだそうです。

トカラヤギ

トカラヤギ

シバヤギ

シバヤギ

後に幕末あたりから西洋人が多数来日するようになり、その際にヤギやヒツジなどの家畜も多数持ち込んでいます。
その際にもちこんだヤギと日本の在来種が交配されたようで、とくにヨーロッパの「ザーネン種」といわれるものが多く持ち込まれ交配されたようです。
それにより、日本では「日本ザーネン種」とよばれるものが主力品種となったようです。

日本ザーネン種

日本ザーネン種

現在では在来種であるシバヤギも、かなりこの日本ザーネン種との交配が進んで、純粋なシバヤギはかなり数が少ないのだとか。

とはいえ、ヤギの専門家でもなく飼っているわけでもない私には、日本ザーネン種とシバヤギの区別はつかないですね。
シバヤギは体が小さいのが特徴で小型ヤギともいわれるそうですが、写真では正直区別がつかないです。
このあたりは、専門家の書いた記事などを探してみてください。

 

ところが、この持ち込まれたヤギは家畜として有効に利用されるだけではありませんでした。
持ち込まれたヤギが、植物を食べつくしてしまう性質のために、既存の他の動植物に悪影響をもたらしてしまい、生態系を破壊してしまう事例もあったようです。

・小笠原諸島の事例

・野生化したヤギ – asahi-net.

・我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リストのうち、現時点で特定外来生物に指定されていない種類のリスト(哺乳類) – 環境省

一方で、ほかの動物による食害などの被害を防ぐためにヤギが用いられるケースもあるようです。

・ヤギを利用した猿害軽減技術

・ヤギでエコ除草 新たなイノシシ対策始まる! – 天草TV

本来の生息地以外に動物を人間が連れてきたのですから、飼い方、扱い方しだいでは毒にも薬にもなり、人間にとってもヤギにとっても他の動物にとっても、幸福にも不幸にもなりうるのだ、ということがよくわかるお話です。

 

ふだん、見ているだけでかわいくて癒されてしまうヤギさんにもこんな歴史があるのですね。

というわけで今日はヤギの歴史と種類についてでした。

(筆者註)
なお、私はヤギの専門家でもなく飼育経験もないため、不十分な知識でこの文を書いていることは理解しています。
なにせあちこちの資料をあさってそれを解釈して書いただけです。
あくまでも、多くの人にヤギとはこういうものだ、ということを知ってもらうために簡略化して書いた部分も多々ありますから、おそらく正確性という点では不十分な解説文になってしまっていると思います。

というわけでもし、識者の方で今回のコラムに指摘する点がありましたらご遠慮なくツイッターのほうでお知らせください。
どうぞよろしくお願いいたします。