シカゴカブスといえば、アメリカのプロ野球「メジャーリーグ」の歴史ある球団として知られているかと思います。

そして、長い間世界一(という言い方もなんだかなあと個人的には思いますが公式にそう言ってるので仕方がない)になれなかったチームとしてもよく知られています。

メジャーリーグの黎明期においては何度か優勝をしている強豪球団だったそうですが、1907年を最後にワールドシリーズでの優勝が2016年まで実に110年近くもなかったこと、またリーグ優勝ですら1945年から2016年まで遠ざかっていたことでよく知られています。

 

そのため、1989年に公開された映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」においても、近未来の2015年を描いた場面で、さまざまな「今の時代では考えられない」という未来の出来事の一つとして、「シカゴカブスが世界一だって?マイアミとのワールドシリーズで?」と主人公マーティが驚く場面があります。

これは、アメリカでもシカゴカブスがワールドシリーズ制覇、ということがありえないこと、の一つとして挙げても多くの人が納得できるほどに知られている、定番ネタのようなものだったことのあらわれでしょう。

カブス優勝(BTTF2)

カブス優勝(BTTF2)

また、対戦相手がマイアミというのも映画公開当時はマイアミにはまだメジャーリーグのチームが存在しなかった、ということで未来に実現してたらいいなあ、というネタとして組み込まれたものでしょう。

マイアミにはその後メジャー球団のマーリンズが誕生し、イチロー選手も活躍しワールドシリーズ優勝もするほどのチームになるわけですが、実際にはカブスとは同じナショナルリーグに所属しています。
そのため、ワールドシリーズで対戦することはあり得なかったりするわけですが、未来を表すギミックとしてはとても面白いものですね。

 

さて、このシカゴカブスですが、長い間優勝ができなかったことにはもうひとつ、ある呪いが関係していたといわれています。
もちろん、おもしろがってネタとして地元の人たちが言い出したところもあるのかもしれませんが、あまりに長い間優勝ができなかったために野球好きの間では世界で広く言われていたお話です。

その呪いとは「ヤギの呪い」です。

 
由来としては、1945年のワールドシリーズのときのある出来事がきっかけです。

当時のアメリカは都市であってもそこで動物を飼っていたりするのが珍しくなかったようで、地元の酒場のオーナーのビリーさんという人は、経営している酒場で「マーフィー」というヤギを飼っていて、自らもヤギのようなひげを蓄えマーフィーともどもに結構な人気者だったそうです。

そのビリーさんはマーフィーを連れて本拠地の「リグレー・フィールド」にカブスの応援に行っていたそうで、マーフィーの分のチケットも買って球場に入場し、カブスファンからもマスコットのような扱いを受けて人気者だったといいます。

ビリーさんとマーフィー

ビリーさんとマーフィー

そしてワールドシリーズに出場したカブスを応援するために、カブス2勝1敗で迎えたシリーズ4戦目の10/6も球場へ出向いたのですが、この時に限って球場の係員からマーフィーの入場を断られてしまったのです。
理由はマーフィーが臭いからというのですが、これにビリーさんは大激怒。

「カブスは2度と勝てないだろう。リグレー・フィールドにヤギの入場が許されるまで、カブスは2度とワールドシリーズに勝てない」
と言い残して球場を去ったのだそうです。

そしてそこからカブスは1勝3敗の成績となり逆転負けでワールドシリーズ制覇を逃してしまいました。
さらにその言葉通りに2015年までの大暗黒期を迎えてしまうのです。

 

ちなみに、それ以降もビリーさんやビリーさんの親族がヤギを連れて球場へ足を運んだことがあるそうですがやはり断られ、そしてチームも勝てなくなったなんてこともあり、あまりに優勝できないことを人々はいつしか、「ビリー・ゴートの呪い」と言うようになったそうです。

ヤギの呪い

ヤギの呪い

その後チームオーナーも、ヤギの呪いを解こうと、ヤギの入場を認めるなどのことをしたのだそうです。
またファンたちも、貧しい人にヤギを贈る慈善事業を行ったりもしたのだそうですが、なかなか呪いは解けず、優勝まであと一歩というところには何度か足をかけたことはあるのですが、歴史的な事件(観客の何気ない行為がプレーを邪魔してしまいそこから敗退)などもあり、2016年までそれは解けることはありませんでした。

 

まあ、まともにかんがえれば呪いとかバカバカしいといって捨てることもできそうなお話ではあるのですが、当時のアメリカではメジャーリーグの球団というのが、地元にとってとても密着した存在であり、マーフィーもとても愛された存在だったが故の逸話かもしれませんね。

 

ちなみにこの事件のあったのは1945年の10月です。
このときの日本はと言えば、太平洋戦争に敗れて全国焼け野原のなか、復興に向けて戦後のごたごたとモノ不足に苦しんでいた時代でもあります。

戦争の勝者と敗者、戦場になった場所とならなかった場所、戦争に勝てた国と勝てなかった国の対比、という意味で考えると、歴史としてみる分にはとても興味深い話です。
いろいろと考えさせられます。

 

というわけで今日は、ヤギの呪いについてのお話でした。