まずはこちらをご覧ください。

ボールが近づいてきたらヤギさんが脚をピンと伸ばしたまま倒れてしまいました。
実はこれは「気絶ヤギ」と呼ばれる現象です。

といってもヤギさんは本当に気絶しているわけではありません。
体中の筋肉が一瞬にして硬直してしまって、立っていることができなくなったのです。

 

実は、ヤギの中には遺伝的な特性で、このように驚いたときなんかに体中の筋肉が硬直してしまう性質をもつ者がいるのです。
とはいっても、すべてのヤギがこのようなことになるわけではありません。
ヤギの品種によって、この現象が発現するものとしないものが存在して、さらに個体によってするものとしないものが存在するんです。

そもそも原因としては、ミオトニー症候群という遺伝異常の一種が、ある品種のヤギには一定確率で発現してしまうもののようです。
このミオトニー症候群というのは、ヤギ以外の生物でも発現することがあって、ネコで発現した例は動画でも紹介されています。


(なお、このネコさんは若くして亡くなってしまったとのことです)

 
これは、ほかの動物でも発現する場合があるそうですが、あくまでも遺伝異常によって発現するものなので、とてもイレギュラーな現象のようです。
しかし、ある特定のヤギにとっては、これは全く珍しいものではないのだそうです。

 

そもそも、野生の動物であれば倒れて動けなくなるというのは、外敵の襲撃に対して無防備になってしまうことを意味しますので、このような特性は生存という点でとても不利な特性です。
なぜこのような特性を残したままヤギは生存し続けているのでしょうか。

実は、この特性が種の保存という点で有利になる場合があるからなんです。
ヤギはもともと群れで生活することの多い生き物です。
もし、その群れがオオカミなどの外的に襲撃された場合、そこで1頭が逃げ遅れたならどうなるでしょう。
そう、外敵はその逃げ遅れた1頭を捕食し、その間に他の仲間たちは逃げおおせるというわけです。
つまり、1頭が犠牲になることで他は助かる、という利点があるのです。

そのため、この特性を持ったヤギというのは、個体としては不利な特性を種の維持に有利だ、という点で残したまま世代を重ねてきたのだといわれているのです。

 

この特性は、肉食の野生動物の多くいる環境でヤギを生育させている牧場主にとっても利用のできる特性だったようで、牧場主たちはこの特性を持つヤギ=ミオトニックゴートを群れの中に含むことを望んでいたといいます。

それが近年になると、この特性を持つヤギを選択交配させることで、狙ってこのミオトニックゴートを出産させるようにすることが高い確率で可能になり、あえてミオトニックゴートを購入して群れの中に混ぜることも行われているといいます。

 

また、この筋肉を硬直させてコテンと倒れてしまう姿がとてもかわいらしい、という理由から、犠牲にすることを目的とせずに愛玩用としてこのミオトニックゴートを購入、生育させるケースがとても増えているとのことです。
このような場合はもっぱら「Fainting goat」(フェインティングゴート・死んだふりヤギ)と呼ぶことが多いようです。

そのため「fainting goat」で動画検索をかけるととてもたくさんの動画が引っかかります。

このような、フェインティングゴートのまとめ動画なんかもたくさんあります。

 

なおこの現象は、驚いた時や体を急に動かそうとしたときなどに一瞬で発生し、10秒程度で元に戻るようです。

おそらくは、筋肉への急な動作の指令や脳が驚いて反射的に体を動かそうと動作指令を出してしまった時に、筋肉側がその信号電流に耐え切れずに一時的に動作停止してしまう、というような感じのメカニズムなのではないでしょうか。
コンピュータでいうところの、一気にリクエスト数が増えすぎてビジー状態になってしまった、という状態でしょうかね。(これはあくまでも私見です)

 

いずれにせよこの特性は、ヤギさんにとってはとってもびっくりした時に起こるわけで、体にも負荷がかかってるような気がしますが、実際これをすることによる体への影響や、これを重ねることによる影響などについては残念ながら私は見つけることができませんでした。
なので、これは当たり前の光景なのでヤギさんには影響はありません、とか本当なら言いたいとことなのですが本当のところはわからないのでここではその評価をすることができません。

 

ですが、現実にこれを見たくて選択交配がおこなわれていて、通常のヤギよりも高い値段で取引もされている。
そしてこれを見て笑っている人たちがたくさんいるということも事実です。
実際、これを見て私自身、かわいいと思ってしまいます。

この現実をヤギさんはどのように思っているのか、まさにヤギのみぞ知るといったところでしょう。

 

ですので、このことに対しての私の評価は一切しません。
現実として、このような特性とこのような人間社会の中での取り扱いが存在している、という事実を知ってほしくて今日はこのことを取り上げました。

今日は気絶ヤギについてとりあげました。