東アジア地域には「台風」という自然現象があります。
いうまでもなく比較的気温の高い時期に発生し、まとまった雨をもたらすことが古代から恵みにもなっていたこの自然現象ですが、時には大きな被害をもたらすことから国際的な観測・統計を行う仕組みというものが存在します。

台風は正確には「熱帯低気圧」といわれるものであり、熱帯地域で発生した前線を伴わない特異な構造を持った低気圧のことを差し、その中でも一定勢力以上のものを特に「台風」と呼ぶわけです。
なので、構造が変化して前線を伴うようになることで「温帯低気圧」と呼ばれるようになったり、構造変化は伴わないものの勢力が衰えることで「台風」とは呼ばずに総合的な呼称である「熱帯低気圧」になったりすることもあるわけです。
(だから「温帯低気圧になった」=勢力が小さくなったので安心 というのは大きな間違いです。
実際「温帯低気圧」になってから勢力が増すこともあります。でも「台風」じゃなくなったので「台風情報」からは抹消されてしまうのはなんだかなあ…そこからも警戒はまだまだ必要なんだけどなあ)

この熱帯低気圧というのは世界の3大洋すべての熱帯域で発生する場合があります。
このうち北西太平洋地域に存在するものを「台風」と呼びますが、北東太平洋や北大西洋地域に存在するものは「ハリケーン」、インド洋に存在するものを「サイクロン」と呼びます。

そんなことから、例えばインド洋で発生したサイクロンがはるか東に向かって進んでしまって太平洋地域に入り込んだ場合は「台風」に呼称が変化する、なんて場合もあるわけです。

で、これら「台風」などの名称のついた熱帯低気圧には、国際的に番号と名称をつけることが決まっていて、個体を識別することで観測や予報時の利便性を上げているわけです。
また、後世にこの時の台風の被害がこれくらいだった、というのにも番号や名前がついていたほうが便利だ、という面もあるでしょう。

台風の番号はその年の何番目に発生した台風なのか、で決定されます。
2021年の最初に発生した台風であれば「2101号」のようになり、日本国内ではこれを一般に「台風1号」と呼んだりします。

名前のほうは、環太平洋地域の「台風委員会」なるものに加盟している各国が提案してきた名称候補リストというものがありまして、これらを結合したリストの順番に発生順に命名していく、ということになっているそうです。
(昔はルールが違っていて、人名をつけていたそうですが2000年から現行ルールになったそうです)

このリストには全部で140の名称が設定されていて、140個台風が来たらまた1つめに戻るという使い方をしていますが、その中には日本の提案した名前も10コ含まれています。
ほかの13か国はまたそれぞれ違った方向性の名前を出していて、なかなかおもしろいです。

日本では星座の名前をもとにリストを作成・提案しています。
ですが、なぜか有名な12星座からとった名前は少なく、コンパスとかカンムリとか、星座に詳しい人でないとわからないような名前がなぜか多く並んでいます。

その中にひとつだけ12星座由来のものがありました。

そうもうお分かりですね。
その名は

 
 

ヤギ座

 
 

ヤギはリストの19番目に記載されていて、140回に1回「台風ヤギ」が発生するわけです。

これまでに台風ヤギは、2000年、2006年、2013年、2018年の計4回発生しています。
このペースで行くと次は2023年か2024年あたりでしょうか。

でもこの命名法を知らない人から見ると

「ヤギが上陸の恐れ」

「ヤギが勢力を強めています」

「ヤギによる被害が広がっています」

「ヤギが消滅しました」

等といわれるとなんだか気が抜けますよね。

でも本当にどうして有名な12星座からはヤギだけが採用されたんでしょうね。
まあ「台風カニ」とかも気が抜けますし、「台風水がめ」は逆にかなり危ない気もしますけどね。

と、今回はヤギ分はとっても少ないけどもヤギと無関係ではないお話でした。




気象庁:台風の番号とアジア名の付け方

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html